第14章 生きるも生かすも・・・あなた次第です。 (吉原炎上編)
鳳「ククク・・・」
『!』
旦那はかすれた声で笑った。
鳳「愛?どこでそんな言葉を覚えてきた瑠維。そんなもの、わしが持ち得ぬのは貴様が一番知っているはずだ。種族は違えど、同じ修羅の道を歩む貴様であれば」
旦那はもう、体を起こす力もないのだろう。そのままの体勢で神威と私に語りかける。
鳳「神威、瑠維、お前等はわしと同じだ。戦う術しか知らぬ。欲しい者は全て戦って力ずくで奪う。気に食わぬものも全て戦って力ずくでねじ伏せる」
鳳「愛も憎しみも、戦うことでしか表現する術を知らぬ」
旦那はそこで、少しほほ笑んだ。そして、私の方を見る。
鳳「瑠維、貴様は人を正しく愛せるようになる可能性はある。貴様は夜兎ではないからな。だが神威、」
旦那は神威の方を見た。もうすでに、喋ることも辛いのだろう。だが、そんなことは感じさせない。
鳳「神威、お前もいずれ知ろう。年老い、己が来た道を振り返った時、我らの道には何もない」
鳳「本当に欲しいものを前にしても、それを抱きしめる腕もない。爪をつきたてることしかできぬ。引き寄せれば引き寄せる程、爪は深く食い込む。手をのばせばのばす程、遠く離れていく」
旦那は天に向かって手を伸ばす、だがその手は太陽を嫌い、傷ついていく。
鳳「・・・・何故、お前さえもわしを嫌う」
手だけではなく、全身がひび割れていく。
鳳「何故、お前さえわしを拒む」
鳳「何故、こんなにも焦がれているのに、わしは渇いていく」
誰よりも、何よりも愛したものに拒まれ、自身の体さえも拒絶する。夜王の運命は夜を行く者なのだろうか・・・