第5章 もう一度
長身で金髪、サングラスをかけたバーテン服の男が、
もうすぐ昼を迎える池袋の街で、
…可愛らしいストラップを眺めている
通りすがる人々は彼を見た
じろじろ見られていることを気にかけることもなく、
誰かを待つ男
‘‘あいつ、来るかな。”
俺の心臓がこんなに煩くなるのは稀だ
緊張なんてここ最近したことねぇな。
だから今も、どうすりゃいいのか分かんねぇ…
こうやって待ってるのに、いざ会ってみたら逃げそうになるかもな
珍しく、ボーッとした顔をした平和島静雄
平和に、静かに暮らしたいと言っている彼にとっては、
これが本当の姿なのかもしれない
趣味として日向ぼっこを挙げている静雄だが、その日向ぼっこの最中はこういう表情をしているのかもしれない…
彼を苛立たせる人間がいるからこそ、
‘‘自動喧嘩人形”と呼ばれる、今の静雄が居る…
忍び寄る影
「あれ〜?シズちゃんどうしたの?」
とある青年の嘲笑。
その姿を見なくても正体が分かる
額にくっきりと浮いた血管は、怒りの大きさを表す…
「池袋には二度と来んなって言わなかったっけなぁ…?
いざやくんよおぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!」
その声を聞いた周りの人間は、
これから戦争が始まることを察して離れて行く
その側に、なにも知らない少女
好意を抱いているバーテン服の青年が突然あげた怒鳴り声に、驚かないはずがない
少女は疑いを持つ
本当に、あの時の彼なのか。
「シズちゃん、とうとうそっちに目覚めた?
可愛いもん持ってるじゃない」
臨也は池袋最強の男の前で、余裕そうにポケットに手を突っ込んだまま。
うざったるい笑みを浮かべるような余裕まであるようだ
「うっせぇイライラする黙れノミ蟲。」
「あーあ、シズちゃんイライラしてる。
イライラはお肌に悪いよ?
シズちゃんが女になろうとしてるなら俺は反対しないのにさ」
その返事には随分と長い時間があった
「大事なもんなんだよ、返さなきゃいけねぇんだよ。」
「笑わせてくれるじゃない。怪物が人間のふりして感情持ってる」
嘲笑…
「失せろ…」
彼は低い声を響かせながら、ストラップを優しく手の中に包み込む
そして、大事そうにポケットにしまい込む。
「は?」
「失せろつってんだよこのクソノミ蟲野郎がぁぁぁぁぁ!!!!!!」