第5章 もう一度
池袋に来てもう1ヶ月以上経った
不安ばっかりだったけど、
高校の時の友達からたまに連絡が来る
夏休みは東京に遊びに行くから、
その時はが住んでる池袋で合致しよう!とも言ってくれる
昨日アルバイト先の店長さんに、
「明日はここのバイト始めてからちょうど1ヶ月になるね〜」とも言われた
1ヶ月前、アルバイト初日に通った道はこっちじゃなかったんだよな
地図と違う道通っちゃって焦ったんだよな…
それで、バーテンさんにストラップを拾ってもらったと思ったら、不思議なことになっちゃって…
かっこいい人だったな…
彼女の足は、1ヶ月前と同じ方向に進んでいく
何かに引きつけられているように、ごく自然に。
「また会えたらいいな」
彼女は微かに笑みを浮かべる
本人はまだ気づかない
心の奥底でバーテン服の男にまた会いたいと思っているからこの道を歩いて行くのに、
この道が懐かしいから なんていう理由をつけていること。
しかしその小さな恋心の欠片は、のちに大きなものになる
それを思い知らされる
「本当にいた…バーテンさん…」
立ち止まって目を丸くする。
目線の先には、ベンチに座って可愛らしいストラップを手に持つあの時の男性
そのストラップが自分のものであることも、は気づかない
‘‘私は気づいていなかったみたい
彼を一目見れてこんなにも嬉しい
これがあの人に対する好意
好意を抱いているなんて、初めて気づいた。”
もう一度、話をしよう。
彼女はバーテン服の男に向かって歩き出した