第5章 もう一度
次の日に俺は、自分で組み立てたストラップを持って昨日と同じ場所にいた
学生であれ社会人であれ、
平日だったら毎日同じように同じ道を通るだろう
ここにいればあいつに会えるかもしれない
そう思った
出勤する前、30分くらいここで待ってみた
ベンチに座ったり、煙草を吸ったり、サングラスを付けたり外したり。
でもあいつとは会えなかった。
まあそうだよな…
昨日いたからって今日もいるとは限らねぇ
そう思ってその日は諦めた
その次の日も、次の次の日も待った
あいつの姿を見ることはなかった
それ以降も仕事がある日はそこで待ってみた
もう、かれこれ1ヶ月くらいになる
ストラップはずっと返せねぇでポケットの中
九瑠璃と舞流には何度か会ったが、
返せてないし女とも会えてないと言うと、二人は少し寂しそうな顔をした
「静雄さん、頑張ってなおしたのにね…」
「しょうがねぇよ、そもそも壊した俺が悪いんだ」
俺も寂しかった。
もう一度会って謝りたかった
あいつはこの街の人間じゃないのかもしれない
旅行でここに来てて、たまたま会っただけなのかもしれない
東京ではよくあることなんだろう。
明日は月末だ。
明日来なかったら、
もう、諦めよう。
こうやって女々しく待ち続けてる俺も気持ち悪りぃ。
明日が最後と決めたけど、明日も来ないと思った
俺の一目惚れから始まった恋は、
あの日でとっくに終わってたんだ
あれっきり、すれ違うことすらないなんてな
あん時に俺がストラップ壊さなかったら…
この力の強ささえ無ければ。
一つでも状況が違ってたら、いい方向に進んでたのかもな