第6章 ありえませんよ
…ハッ、まさか。
昨日私が部活中隠れて笑っていた腹いせに?!
「…有り得るわね」
「ん?何か言った?」
「何でもないわ。田中さんもわざわざ征十郎の言うことを真に受けなくていいのよ。それじゃあ、私は部活へ行くわね」
「あ、ちょっと。藍川さん!」
私を呼び止める田中さんの声を無視して教室を出た。
「(…むっかつくわ。私が運動が苦手だってことわかったうえで、あんな嫌がらせなんて。本当に人間なの?)」
「大分怒ってんな、華澄ちゃん」
私が教室を出た後を追ってきた成美ちゃんは、他人事のようにして笑う。
怒るに決まってるじゃない。
だって、皆知ってるんでしょう?
私が運動音痴だってこと。
「成美ちゃん、ボール貸してちょうだい」
「へ?何々?練習するん?」
「当たり前よ!こうなったら私だってやればできるってところを見せてやるわ」
「なんかおもろいことになってきたなー」
成美ちゃんは、さらに笑った。