第6章 ありえませんよ
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その翌日。
私は今現在、とても憂鬱だ。
梅雨のジメジメに加えて、私が最も嫌いなジャンルの話をHRで進められているからだ。
「男女で十人ずつバレーとサッカーを選択してもらう」
教壇に立つクラス委員の征十郎。
その一歩後ろで黒板に記録しているのは同じくクラス委員の田中さん。
田中さんは絶対征十郎に好意を抱いている。
その二人が並んで前に立っているだけでも不愉快だというのに、今進められている話は球技大会の選択分け。
「(…別に?嫉妬なんてしてないわよ。どうせ私は道具だし、どうせ補欠要員だし)」
私は頬杖をついて、無表情なまま窓の外へ目をやった。
父や母も、従兄の修ちゃんも皆運動神経は悪い方ではないというのに、何故か私だけ尋常ではないほど、悪い。
これだけは昔からのことで、今更どうするつもりもないが、やはりこういうイベントの時は困る。
「まずバレー部とサッカー部に所属している者だが、自動的にバレー部員はサッカー、サッカー部員はバレー選択となる。バレー部手を挙げろ」
征十郎は淡々と効率よく話を進めていき、自動的に決まるバレー部とサッカー部の人数によって残りのクラスメイトの選択を決めるらしい。