第6章 ありえませんよ
そのまま三人は、征十郎に促されて、コートの中へと向かっていった。
「ねぇ、征十郎」
「なんだ」
「にらめっこしない?」
「……」
ふざけて私が言えば、無表情で征十郎は私を見下ろした。
「断る」
「いいじゃない」
「練習を始める」
そんなに私に変顔を見せたくないのか。
コタちゃんには見せた癖に。
「はいはい、行ってらっしゃい」
コートに戻って行く征十郎の後姿を見ながら、私は征十郎の変顔を想像してみる。
「…フフッ」
「おい」
私が小さく笑うと、それを見逃さなかった征十郎は私の方を向いて睨みをきかす。
その睨みは別に怖くはなかったが、私は姿勢を正して、練習に目をやった。
そしてこの日の練習中、何かにつけてずっと笑っていた永ちゃんは、征十郎からいつもの倍のメニューを課せられていた。