第6章 ありえませんよ
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「アハハハハッ、そんなことしてたんですか?」
その日の放課後。
部活が始まる前に、レオ姉とコタちゃん、永ちゃんの三人が、私の元へやってきては急に「征十郎が負けたところを見たことがあるか」なんて聞いてくるので、その理由を問い返せば、話は昼休みのことへ遡った。
「征十郎が負けるわけありませんよ。私だって見たことないんですし、想像もつきません。それにしても、征十郎がにらめっこ…フッ」
「…ブホッ」
征十郎は昼休みに部室へファイルを返しに行くと、部室にいたこの三人に捕まり、本当に今までで一度も負けたことがないのか、という検証をされていたらしい。
筋肉自慢の永ちゃんは腕相撲。
コタちゃんはにらめっこ。
レオ姉は私も見たトランプ、ポーカーだ。
勝負は勿論征十郎の全勝だったらしいのだが、私はそんなことよりも征十郎がにらめっこをした、ということがおかしすぎて、つい笑ってしまう。
それを思い出してか、永ちゃんも思わず吹き出した。
「やっぱり本当のことだったのね…流石は征ちゃん、というべきかしら」
「…ブフッ、ま、まさか力勝負で負けるなんざ思いもしなかったぜ」
「俺もー。いけると思ったんだけどなー」
目の前の三人は口々に言う。