第6章 ありえませんよ
「華澄、どうしたんだ」
征十郎に声を掛けられ、ハッと我に返り、ここへ来た本来の目的を思い出す。
「次の授業、教室移動でしょう?ほら、征十郎の分も持ってきたから行くわよ」
私が手に持っていた自分と征十郎の分の教科書たちを見せながら言った時、ちょうど予鈴が鳴った。
「…ああ、もうこんな時間か。悪いが、僕は先に失礼するよ。華澄、わざわざすまないな。行くぞ」
「あ、もう。待ってよ」
予鈴を聞いた征十郎は席を立ち、私の手から自分の教科書たちを受け取ると、部室を出て行き、私もそれに続いた。
「どうしてトランプなんてしてたの?」
「フッ、何でだろうな」
征十郎と並んで廊下を歩いている間、私は何があったのかを彼に尋ねたが、いくら聞いても彼は教えてはくれなかった。