第6章 ありえませんよ
「華澄ちゃん、話はもう終わったん?」
征十郎が教室を出て行った直後、成美ちゃんが私に声を掛ける。
「終わったわよ。全く、昼休みまでこき使わないでほしいわ」
「アハハッ!そりゃ華澄ちゃんは才能あんねやからしゃーないやん」
他人事のように成美ちゃんは私を笑う。
まあ、本当に他人事なんだけどね。
「それよりさ。今度、うち、球技大会あるやん?どっちに出るか決めたん?」
「へ?球技大会?」
「えっ!?何その反応!?」
球技大会…。
私が嫌いなイベントベスト3に入る響きだわ。
そう言えば昨日、担任がHRでそんなことを言っていた気がしなくもない。
「今年はバレーとサッカーやねんて。どっちにするん?」
「成美ちゃんはどっちにするの?」
「うちはバレー部やさかい、自動的にサッカーやな」
サッカーか…。
成美ちゃんと同じものにでもしようと思っていたが、サッカーは屋外スポーツ。
日焼けだけは御免被る。
「焼けたくないから、私はバレーかしら…」
「プーっ、動機!不純すぎやろ!」
どっちでもいいんだけどね。
どうせ私は控えにまわって出ないんだし。
成美ちゃんはその後もずっと、私の不純な動機について笑い続けた。
「あ、もうこんな時間や。次教室移動やんな?」
ふと時計を見た成美ちゃんが言う。