第6章 ありえませんよ
IH京都府予選が終了したと同時に、季節は梅雨に入った。
ジメジメとした湿気はどこにいても同じで、ただでさえ気分がいいわけでもないのに、さらに気分はは落ちてゆく。
「予選の試合はまずまずと言ったところだろう」
クーラーは効いていても、教室の湿度も高く、加えてこの目の前にいる彼に捕まったおかげで、私は昼休みという自由時間さえもマネージャーとしての務めを果たす羽目になっていた。
「私を一々使わなくても、データはもう纏めてあるんだから、一人で分析しなさいよ」
「第三者の意見も必要だということは考えられないのか」
湿気のせいで髪の毛も上手くまとまらないし、肌はベタベタするし、お気に入りのイチゴオレもそこまで美味しく感じなくなる。
私は机の上で頬杖をついて、私の纏めたデータファイルをパラパラとめくる征十郎を見た。
「今回は控えの選手がどうこうよりも黛だ。華澄はどう思う」
「どうって言われてもね…公式戦慣れはできたんじゃないかしら?ミスディレクションも完成してきたし、あとは…彼をどう隠すかなのよね…」
今はまだ京都内だけでの黛さん。
影は薄いとは言っても、テツ君ほどではないし、さらには「洛山には『六人目』がいる」という情報自体を隠したい。
「テツヤの時と同じでいいんじゃないのか」
「それじゃ面白くもなんともないじゃない」