第5章 尽くすだけ
バスの窓から流れる景色を眺めながら、ウトウトし始めた時、バスは会場近くのバス停に停まり、私は慌てて降りた。
「華澄ちゃーん。こっちよー」
レオ姉の声が遠くから聞こえ、声の方を見やると、既に集合している洛山の集団が目に入った。
「遅いぞ。僕を待たせるな」
「時間通りに来てるから遅刻ではないわよ。それに、こんなか弱い女の子がたった一人で重い荷物を持ってここまで来たことを評価して欲しいくらいだわ」
「口答えをするな。それがお前の仕事だろう」
最後の一人だったらしい私が揃ったことを確認すると、征十郎は「行くぞ」と声を掛け、全員を連れて体育館の中へ入っていった。
「しゃーねーな。俺が持ってやるよ」
征十郎の態度に少なからず腹を立てた私が頬を膨らましていると、永ちゃんが私の荷物をヒョイっと持ち上げてくれる。
「いいですよ。永ちゃんスタメンなんだし、征十郎の言う通りこれは私の仕事ですから」
「いいって、気にすんな。それに今日俺らは出ねーし」
「そうなんですか?」
永ちゃんの話によると、今日は主力メンバーは温存。
控えの選手をメインに出していくつもりらしい。