第5章 尽くすだけ
仕方ないので、私は紙袋を持って黛さんの右側に移動し、紙袋の中からアイシング用のスプレーや氷嚢を取り出した。
「普段は使わないようなところを無理に使ってるんですから痛めて当然です。少しでも違和感を感じたら言うように前に言いましたよね?」
「そこまで大したことじゃねーと思ってたからな」
「今は大したことがなくとも、そのうち痛みが蓄積されていくんですよ?早めの処置が重要なんです。今週末から予選が始まるんですからしっかりしてください」
…ぐっ。
やっぱりこのスプレー臭いわね。
これだからスプレーを使ったアイシングケアは嫌いなのよ。
「十五分経ったらとってもらって結構です。それと部活前にテーピングをするので、一度私のところに来てください」
「わかった」
黛さんの返事を確認した私は、自分の道具を紙袋の中へ片づけ始める。