第5章 尽くすだけ
だが、私の本当の用件はここから。
「黛さん、右手を出してください」
「!」
このゴールデンウィークの間に相当な練習をしたのだろう。
六人目としてのパス練習は、手首に負担が掛かりやすい。
それも、これまでは一般の選手としてプレイしてきた黛さんなら尚更。
普段は使わないようなところを使うのだから、練習を始めたばかりの頃というのは、どうしても痛みを感じてしまうもの。
「手首痛めたんでしょう?昼休みの間だけで構いませんので冷やしますよ」
「…わかるのか?」
「私を誰だと思ってるんですか?」
観念した黛さんは、本を左手に持ち替えて、右手を私に差し出した。
「(…やりにくいわね)」
黛さんの左側にいた私にそんな態勢で右手を出されてもやり辛い。
とりあえず本は一旦閉じなさいよ。