第5章 尽くすだけ
あくまで自分から退部を言い渡した、ということは伏せておくつもりなのか。
「勿体ないわね…。その子も上手いんでしょう?」
レオ姉は片手を頬にあてて、残念そうに言った。
「確かに祥ちゃんは相当な実力をもっています。ですが、それでも『キセキの世代』には及びませんよ。それに、今でも練習をサボっているようでしたし、IHまで来ることはないでしょうね。今のところは」
「今のところは?どういう意味だ」
私が答えると、征十郎が珍しく疑問に思ったのか、私に問い返してくる。
「祥ちゃんの性格を忘れたの?もしこの先、祥ちゃんが『キセキの世代』の名声を欲したとしたらどうなると思う?」
「…なるほど。間違いなく全国の舞台まで出てくることになるだろうな」
私の推測に納得したのか、征十郎はふむ、と頷きながら答えた。
「帝光ってホント、面白い奴が多いね。ね、カスミン!他は!?」
コタちゃんは興味津々に、私の手元にある今回集めてきた情報を纏めたノートを指さしながら言った。