第5章 尽くすだけ
その日、運のいいことに私が会ったのは黛さんだけだったので、そのまま家に帰った。
黛さんも、今日のことはなかったことにしてやる。と言ってくれ、お言葉に甘えることにした。
…大丈夫。
一日気持ちを整理すれば、また明日からは普段通りに過ごせる。
でなければ、私は征十郎の側にいることはできなくなるのだから。
「わぁ。俺、このバナナのお菓子好きなんだよねー。カスミン、センスあるぅ」
ゴールデンウィークも明けた翌日。
昼休みに私は、征十郎、レオ姉、コタちゃん、永ちゃんと学食でお昼を取っていた。
私が買ってきたお土産を出すと、コタちゃんは目を輝かせて喜ぶ。
「んなちっせーお菓子より肉が良かったぜ」
「永吉!折角華澄ちゃんが買ってきてくれたのに、それはないでしょ?!ごめんね、華澄ちゃん」
「いいえ、気にしないでください。永ちゃんの好みを忘れてた私が悪いので」
「そんなことないわ。アタシもこのお菓子大好きよ。ありがとう」
レオ姉は嬉しそうにして箱の中からお菓子を取り出し、それを口へ運ぶ。
文句を言っていた永ちゃんも、何だかんだでそれを手に取っていた。
「それよりも、僕はここに静岡のお土産があることの方が気になるんだが」
お菓子には一切手を付けずに、私の目の前に座る征十郎は言う。