第4章 ごめんね
それでも…。
さっちゃんではなく私を選んでくれたのは、少しでも私のことを想ってくれてるんじゃないか、って思ってたのに。
そのほんの少しの希望も打ち砕かれた。
わかっていたとしても、彼の口から聞くだけでこんなにも苦しいなんて思いもしなかった。
「…っと、危ねーな」
角を曲がろうとした時、こちらへ向かっていた人物にぶつかりそうになって、私は漸く止まった。
「走んなよ、危ねーだろ…って藍川?」
顔をあげればそこに立っていたのは黛さん。
黛さんは顔をあげた私の顔を覗き込んで、珍しく心配そうな表情を浮かべた。
「お前、泣いてんのか?」
「え?」
黛さんに言われて、私は自分の頬を触った。
手に冷たく、濡れた感触が伝わる。
「な、何言ってるんですか。私が泣くわけないでしょう?気のせいですよ」
その手に伝わった冷たい感覚を拭い、いつもの笑顔を張り付けた。
「ふーん…ま、俺には関係ねーけど」
ここで会ったのが黛さんで良かった。
彼以外の人であったならば、何があったのか尋問されていたに違いない。