第4章 ごめんね
征十郎はただ事実を答えているだけなのに、私は何だか悲しくなって俯いてしまう。
「でもさぁ、やっぱ好きなんじゃねーの?じゃないとわざわざ連れてこないっしょ」
「小太郎、いい加減にしなさいよ」
私がここにいることを知らないコタちゃんは、そんな質問を征十郎に投げつけていた。
「(…ダメ。聞いてはいけない)」
どことなく、頭から危険信号が発せられる。
征十郎はまだ答えてはいないというのに、私はその答えを知っている気がした。
「気にするな、玲央。そうだね…簡潔に言えば、僕は華澄に好意は抱いていない」
ああ、やっぱり。
好きだって自覚した時からわかってたことじゃない。
この気持ちは一方通行だって。
居た堪れなくなって、道具は後で樋口先輩と一緒に取りに来よう、とその場を離れようと部室のドアに背を向けた時。
「…強いて言えば、彼女は僕の道具だ」
征十郎の声がクリアに聞こえた。