第20章 側にいたい
私はその様子を微笑ましく見つつ、ふと、北棟の屋上を見上げた。
「?」
一瞬だけ。
去りゆく影が見えた気がした。
その影が誰かなんてわからなかったが、間違いなく黛さんだと思う。
そう信じたい。
「華澄、急に立ち止まってどうしたんだい?」
誰もいない屋上に笑みを浮かべていると、征十郎が声を掛ける。
「いいえ、なんでもないわ」
私は目の前の四人…レオ姉、コタちゃん、永ちゃん…そして征十郎に微笑んだ。
沢山のあやまちを犯した。
沢山の人を傷つけ、自分自身も沢山傷ついた。
だからこそ見つけられた…得ることができた私の居場所。
大丈夫。
私はここでもう一度、青春を歩いてゆける。
…彼らと共に。
まだ肌寒い春の風が私の額の傷跡を優しく撫でる。
その風を受けて、私は微笑みながら待つ、四人の元へ駆け出した。