第20章 側にいたい
それに気づいたコタちゃんと永ちゃんは、「コイツは知ってる!」と思ったのか興味津々に征十郎に詰め寄る。
「赤司は見つけられたんだろ、黛さんのこと!どうだった、泣いてた!?」
「さぁ、どうだったかな」
「あ、何その顔!もしかして見たの!?泣き顔!?マジ!?」
「いや、あいつならムスッとしてたんじゃねぇか?」
さらにさらにと詰め寄る二人を征十郎はするりと避け、歩き出した。
「教室へ戻ろう。卒業式が終わったとはいえ、HRもあるだろう?」
「ちょ、待ってよ、赤司ー!」
何も答えない征十郎にコタちゃんは口を尖らせるが、征十郎は構わず歩いてゆく。
仕方ないので、私たちもその後に続いて歩き出した。
「なんつーか…ここまで姿を見ないと疑いたくなるよね」
「疑うって何を?」
頭の後ろで手を組みながら言うコタちゃんに、レオ姉が問いかける。
「あの人、本当にうちの高校にいたのかな?」
「はぁ?何言ってんのよ、あんた」
「ここまでくると、その線も有り得るな」
コタちゃんが眉間に皺を寄せて真剣な顔つきで言うと、レオ姉は心底呆れた顔で返した。
しかし、レオ姉の隣を歩く永ちゃんが腕組みしながら頷き、コタちゃんの考えに同調する。
「どういう線よ!あんたたち、本当もう何言ってるの!征ちゃんもなんか言ってやって!あの人ちゃんといたわよね!?」
「さてね」
レオ姉が凄い勢いで言った言葉に征十郎は短く答えた。
だが、その征十郎は肩を小さく震わせて笑っている。
征十郎がこんな笑い方するのは、洛山では初めてのこと。