第20章 側にいたい
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その日の部活。
冷水器のところでドリンクを作っていると、私のポケットの中で携帯が震えた。
振動が長いことから、これはメールではなく電話だな…と私は携帯を手に取り、着信相手を確認する。
さっちゃんだった。
「もしも…」
『カスミン!!早まっちゃダメだよ!!!』
キーンとするような甲高い声に、私は一旦耳から携帯を離す。
「さ、さっちゃん?どうしたのよ急に…早まるって何のこと?」
全くさっちゃんの言っている意味が理解できずに、私は戸惑いながら問いかける。
すると、さっちゃんはグスッと鼻をすすりながら答えた。
『カスミン…イギリスに行くんでしょ…!?』
「!」
あっちゃぁ…もうバレちゃったのね…。
流石はさっちゃん、としか言いようがないわ。
『テツ君の誕生日会で会った時から何だか様子がおかしかったから調べたの…ねぇ、カスミン…考え直してよ…折角皆元に戻ったんだよ?なのにカスミンだけ遠くに言っちゃうなんて、私は嫌だよ…!』
「さっちゃん…」
『オイ、さつき。代われ』
さっちゃんが鼻をすする音に混じって大ちゃんの声が聞こえた。
『華澄、考え直せ』
「…大ちゃん」
『今更離れる必要がどこにあんだよ』
「……」
私は冷水器のペダルを踏み続けながら聞いていた。