第20章 側にいたい
飛び出す水は何もすることなく、ただただ流れ落ちていくだけで、正直なところ無駄遣い。
「大ちゃん…私ね?…やっぱり征十郎のことが好き…側にいたい…だけど、洛山を裏切った私がここにいていいわけないのよ…。それに…あの時のことだって、私のせいなんだから…私は征十郎の側にいるべきじゃないの…」
ポトッと流れる水の中に、一粒の涙が零れた。
ずっと前から、昔の征十郎に戻ったら彼の前から姿を消そうと決めていた。
なのにこんなに苦しくて胸が痛いのは…まだ心のどこかで迷ってるのは…。
私が征十郎から離れたくないから。
好きだから。
側にいたい、と思ってるから。
『…泣くくらいならやめとけよ』
「っ泣いてなんかないわ。平気よ。…私そろそろ体育館に戻らなきゃだから…切るわね?」
『オイ!』
これ以上何か言われてしまえば、それこそ涙が止まらなくなってしまう。
それでは部員から不審に思われてしまう。
私はまだ何か言おうとしていた大ちゃんの声を遮って、無理矢理電話を切った。
「華澄ちゃん…?」
小さく深呼吸をしながら、ほんの少しの涙を拭っていると、背後から私を呼ぶ声がした。