第20章 側にいたい
「失礼しました」
私はまだ一年生であるにも関わらず、進路相談室から出てくる。
三学期になってからはこうして何度かここを訪れ、先生に留学の相談をしているのだ。
運のいいことに、ここ洛山高校では留学している期間を「休学扱い」ではなく「留学扱い」にしてくれる。
現在の時点で大方決まっているのは、留学するのは次の夏から一年間であることと行先の候補。
「あら、華澄ちゃん。こんなとこで何してるの?」
「あ、皆さん…こんにちは」
進路相談室から出てくると、その目の前の廊下で会ったのはレオ姉、コタちゃん、永ちゃんの五将の三人。
正直、まずいとこを見られた。
「…先生に授業でわからなかったことを質問してたんです」
「へぇ…真面目だね、カスミン」
「にしても何で進路相談室なんだ?」
「えーっと…」
コタちゃんは私の嘘を疑うことなく信じてくれたが、永ちゃんは嘘に気づいてはいないだろうが、痛いところを突く。
「偶々ですよ」
偶々、という言葉は本当に便利なものだと思う。
そう言っておけば、永ちゃんもコタちゃん同様に「へぇ…」と声を漏らした。
「……」
ただ、レオ姉だけはいまだどこか疑っている視線を私に向けていた。
そんなことに気づかず、私は目の前の三人に笑みを見せていた。