第3章 似てるの
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黛さんが再入部して一軍へやってきた初日。
たった数週間とはいえ、バスケから離れた彼の体力は以前よりも落ちていたし、何より彼は元々二軍の人間。
一軍の練習にそう簡単について行けるわけもなく、練習終了後は体育館の隅で脱力していた。
「お疲れ様です」
他の部員のケア指示を終えた私は、黛さんに近づいてドリンクとタオルを渡す。
「…お前の仕業か」
私がそれらを渡すなり黛さんは恨めしそうに私を見た。
「何のことでしょうか?」
「とぼけんな。お前が赤司に俺のことを言ったんだろ」
「まさか。私は餌を撒いただけですよ」
「…餌?」
私が口角を上げながらそう答えると、黛さんは眉間に皺を寄せながらドリンクに口をつける。
「そう、餌。私は『あなた』という征十郎が喜びそうな餌を撒いたにすぎません。そして彼はその餌に食いついた。それだけですよ」
「…お前、性格悪いって言われるだろ」
「失礼ですね。今初めて言われましたよ」
そもそも私はこんな性格ではなかったはず。
それも全部、あの日から変わった。