第19章 私の役目
気持ちかぁ…。
私はコートで楽しそうにバスケをし続ける六人を眺めながら徐に口を開いた。
「テツ君は…さっちゃんのことどう思ってるの?」
「どう…とは?」
「気づいてないわけじゃないんでしょう、さっちゃんの気持ち。そろそろ応えてあげてもいいんじゃないかしら?」
「……」
私がそう言うと、テツ君は少し考えながらコートの中のさっちゃんを見た。
「桃井さんの気持ちは嬉しいです。けど、桃井さんは本当に僕のことを好きなんでしょうか?」
「どういう意味?」
好きなんでしょうか?って好きでしょう、あれは。
誰から見てもさっちゃんのテツ君への好意はあからさまだ。
何をいまさら疑う必要があるのだろうか。
「今は気づいていないだけで、桃井さんの本当の好きな人は僕ではない別の人だと思います。勿論、桃井さんが本当に僕に好意を抱いてくれているのならば、僕はその気持ちにきちんと応えます。ですが、今は応えることはできません」
そう言ったテツ君の視線はいつの間にやら大ちゃんに。
「近すぎて気づかないこともあるんですよ」
「へぇ…」
テツ君が言いたいことはわかった。
幼馴染のさっちゃんと大ちゃん…近すぎるその関係から互いに自分の本当の気持ちに気づいていない、と言うことなのだろう。