第19章 私の役目
戦慄している私たちを余所に、さっちゃんはケーキを取り出した。
それは久しぶりに見る、禍々しいオーラを放つ物体。
「テツ君、おめでとう!はい、あーん」
「さつき!やめろ!!」
「早まるな!!」
既に切り分けられているケーキを一口分フォークですくい、さっちゃんはテツ君の口元へ運ぶ。
それを見た大ちゃんと真ちゃんは声を荒げる。
「黒ちん…すげぇ顔だねー…」
「華澄、胃薬は持っているか?」
「ええ、一応あるけど…効くかどうかは…」
当のテツ君は冷汗を流しながら、目の前に差し出されたそれを見つめる。
私たちはそれを代わってあげる勇気はなく、ただその光景をジッと見守った。
「これは試練です。これは試練です。これは試練です…」
「何か呟いてるッスね…」
なかなか食べないテツ君にさっちゃんが首を傾げはじめたその時。
テツ君はパクッとそれを口の中へ入れた。