第19章 私の役目
氷室さんの言っていることは間違っていない。
だけど。
「心配してくれてありがとう。でも…もうずっと前から決めてたことなの」
『そうか…』
『氷室ー?いつまで話してるアルか?』
小さく呟いた氷室さんの後ろから、別の声が聞こえた。
語尾に「アル」なんて付けているから、間違いなく留学生の劉さんだ。
「今のは劉さんかしら?ふふっ、氷室さんの言う通り本当に『アル』を付けて話すのね?」
『ご名答だ』
私が問いかけると、氷室さんはクスッと笑った。
そうしている内にも電話口の遠くの方からは劉さんに加えてあっくんの声まで聞こえてくる。
『室ちんーまだー?』
『ああ、すまない。今行くよ。じゃあまたね?華澄ちゃん』
「ええ、また」
『はっ?!室ちん今、華澄って言…っ』
通話の切れる間際にあっくんの声が聞こえた。
今頃氷室さんは、あっくんから質問攻めにあってるんだろうな…
なんて想像してみると、なんだかおかしくて笑ってしまう。