第19章 私の役目
私はポケットから手を出し、二人の方へ駆け出した。
「黛さぁんっっ」
珍しく…と言うより初めて、黛さんの腕に抱き付きながら私は彼の名前を呼んだ。
「…っ…藍川か、何だよ」
「皆でご飯に行きましょう?」
「華澄、黛さんはもう卒業までそっとしておいて欲しいそうだ」
黛さんの隣に立つ征十郎がクスッと笑いながら言った。
「えぇ?そんなの寂しいですよ」
「そーだよ!アンタ引退式も出てないし、折角カスミンが誘ってんだから行こうよ!」
私に便乗しながらコタちゃんも言う。
黛さんは鬱陶しそうに困った顔…だけど、どこか柔らかな表情を見せながらため息をついた。
「わかったよ、行けばいいんだろ?ただし、今日だけだからな?」
「「やった!!」」
渋々、と言った感じで了承した黛さんに、私とコタちゃんはハイタッチ。
「征ちゃんも行くでしょ?」
「ああ、そうだね」
「早く行こーぜー」
私たちは征十郎と黛さんが鞄を取ってくるのを校門で待ち、六人全員が揃ったところで歩き出した。