第18章 おかえりなさい
「征十郎…」
溢れて止まらない涙を拭いながらも、礼を終えた征十郎の元へ歩み寄った。
私が声に振り返った征十郎は、あの頃と同じ優しい笑みを見せる。
「初めて敗北というものを味わったよ…だが、悪いものではないな」
あの頃と同じ、優しく凛とした声。
「華澄、今まで心配をかけたな。ずっと側にいてくれて…ありがとう」
その言葉に、私は目を見開き、さらに涙が溢れだしてくる。
そして、「そんなことない」という意を込めて首を大きく振り、征十郎に笑みを見せた。
「おかえりなさい…征十郎…」
「ああ…ただいま」
そう言いながら征十郎は、私をギュッと抱きしめた。
その瞬間。
あの時からずっとモノクロだった世界が、鮮やかに彩られていくのを感じた。