第18章 おかえりなさい
そして、再び征十郎はゾーンに入った。
そのことに動揺する誠凛に、征十郎はフッと笑みを見せる。
「そう身構えるな。心配しなくても、お前の考えているようなことにはならないよ。ゾーンと言っても、つまりは少し前の状態に戻っただけだ。俺自身はもう大げさに変わったりしない…ただし、他の四人は別だが」
征十郎は静かに言った。
「…え」
「なっ」
「馬鹿な」
「あり得ない…!」
「ゾーンが…五人全員…!?」
その光景に私も思わず目を見開く。
以前、「もし”あの時”の出来事がなく、征十郎の人格が変わらなかったら…彼は『天帝の眼』ではなく、どんな能力を開花させただろうか」と考えたことがある。
まさかそれが、味方の潜在能力を限界まで引き出す…ゾーンへ入れるパスだなんて思いもしなかった。
征十郎のパスを受けた洛山選手はどんどん動きが良くなっていく。
誠凛もそれにくらいついていくが、ゾーンに入った彼らを相手するのは相当堪えるものだ。
そして、そんな時。
征十郎からパスを受けた黛さんは、ゴール下の永ちゃんにパスを出す。
「なっ…根武谷のアリウープ!?」
「まだだぁ!」
「火神ー!!」
それを止めようと、ブロックに跳んだ火神。