第3章 似てるの
それでも、私にとってこの空間は心地よかった。
「…携帯鳴ってるぞ」
私のポケットで鳴り出す携帯。
「出れないの。私にも色々と事情があるんです」
「へぇ」
どこの高校でも今の時間帯は昼休みなのだろう、よく掛かってくる。
昼休みだけではなく、夜も同様だ。
相手は言うまでもなく、中学時代の元チームメイト。
薄々私の嘘に気づいている皆は、どうにか私の本当の居場所を突き止めたいらしく、このよう連絡をしてくる。
中には、体の不調の相談ということもあるので、そのような内容のメールは返すが、その他は返信しない。
勿論電話には一切出ない。
「”高嶺の華”も大変なんですよ」
「自分で言うな」
私がそう言っても、黛さんは一切興味を示さない。
でも私は話を聞いてほしくて言ってるわけではないので、彼といる時は凄く楽だった。
*
ある日の部活帰り。
「テーピングの資格を取ろうと思うんだけど、どうかしら?」
「それは今更お前に必要なのか?」
洛山へ入学してからは征十郎と帰ることが日課となった。