第3章 似てるの
その時、昼休みの終わりを告げる予鈴のチャイムが鳴る。
「一年の教室はここから遠いんじゃねーのか」
「このままサボっちゃおうかしら。面倒だし」
「”高嶺の華”が聞いて呆れるぜ」
そう言って彼は本を閉じて、立ち上がる。
「いつもここにいるの?また来てもいいかしら?」
「…好きにすれば」
私に見向きもせずに彼、黛さんは校舎へ入っていった。
「(…あ)」
その後姿が、私のよく知っている人物と重なる。
「…テツ君」
私のあやまちのせいで、一度バスケを辞めてしまった彼。
よくよく考えてみれば類似点なんて沢山あるじゃない。
「元気にしてるのかしら…」
今週末に黄瀬のいる海常と練習試合をするらしいテツ君。
正直、彼が黄瀬に勝てるなんて思っていない。
チームメイトのレベルがどうであれ、相手は黄瀬なのだ。
あいつのことは好きではないが、才能は認めている。
それでも、テツ君に勝ってほしい。
黄瀬だけじゃなく、『キセキの世代』を…そして私たち洛山を倒してほしい。
そうすればきっと彼らは…。
その時、またポケットで着信音が鳴る。
「(また修ちゃん?)」
少々嫌な顔をして着信相手を見るとなんと、真ちゃん。
何の用だろうか。
電話に出ようと通話ボタンを押しかけて、手を止めた。
簡単に出れるわけない。
私がここにいることを裏付ける確たる証拠を誰にも掴ませてはいけない。
暫くすると着信音は鳴りやんだ。
「…かくれんぼって疲れるものなのね」
私はひとつため息をついた。