第17章 もうやめて
ブザーが鳴り、T・Oが終了した。
『誠凛、選手交代です』
それと同時にコートへ出てきた人物を見て、私は目を見開いた。
いいえ、きっと私だけじゃなかったはず。
だって…。
「テツ…君…」
そこに立っていたのは、特性を失ったテツ君だったのだから。
テツ君がコートへ出てくると、ギャラリーからは大きな声援が上がる。
「…はあ!?」
「どういうつもり…!?」
「なんも変わってないじゃんよ。観客の反応を見ても明らか…盛り上げちゃダメっしょ。目立ってるってことじゃん」
永ちゃん、レオ姉、コタちゃんは口々に言った。
黛さんも解せない様子でテツ君を見た。
「どういうつもりだ、テツヤ。まさかまだ勝算があるつもりなら楽観的にもほどがあるよ」
征十郎も他の四人と同じ目でテツ君を見ながら言う。
「そう言う風に考えていません。勝ちたいから戦う、それだけです。結果がどうだろうと最後の最後まで僕は逃げません…!」
「…なるほど。無意味な決断だ」
征十郎はテツ君の言葉をバッサリと切った。
だけど、私にはそう言ったテツ君の顔が眩しく映り、中学の卒業式の彼の決意した顔を思い出した。