第17章 もうやめて
その後のレオ姉のフリースローは、彼にしては珍しく三本中二本も外してしまった。
だが、目的は果たしたと言ってもいいだろう。
残るは火神。
それも…もう…。
『誠凛、T・Oです』
誠凛の心は完全に折れた。
希望の光は全て消え……もう立ち上がれない。
「征十郎…もういいでしょう?誠凛は完全に折れたわ…」
「……」
ベンチに戻ってきた彼に私は言う。
それを見た征十郎は、鋭い目つきで私を見た。
「華澄…お前は…」
「藍川、ドリンクを頼む」
「あ…はい」
征十郎が何か言う前に、黛さんが助けを出してくれた。
明らかに機嫌が宜しくなくなった彼を、怖くて見ることができずに、視線を下に向けたまま私はドリンクを配った。
「…俺、言ったよな?」
「すみません…」
「……」
黛さんからしてみれば、征十郎の機嫌が悪くなって被害を受けるのは自分たちなんだから、やめてくれ…という思いなんだろうけど。
それでも黛さんはそれ以上は何も言わなかった。