第3章 似てるの
そんな彼を見て、私は違和感を感じた。
「ねぇ、あなた誰かに似てるって言われたことない?」
そう。
誰だかは思い出せないが、私の知っている誰かに似ている気がする。
…思い出せそうで思い出せない、どこかむず痒い感覚を覚える。
「さあな。もしお前が俺をどこかで見たことあるって言ってんなら、体育館じゃねーの?」
「体育館?」
「バスケ部だったから」
バスケ部?こんな人いたかしら?
部員全員のデータは取ってあるし、百人近くいるとしても流石に顔くらいはわかるはずなんだけど…。
そう思いながら、つい先日まとめた部員のデータの記憶を頭の中で巡らせてはみるが、思い出せない。
「…ま、もう辞めたけどな」
「もう辞めたの?入部してすぐじゃない」
私がそう言うと、彼は漸く本から目を離し訝しげに私を見る。
「一応言っとくけど、俺三年」
…三年?
「…え?先輩?」
顔が思い出せないからてっきり一年生なんだと思っていた。
「あ、そう言えば。私が入部してからほとんどの三年生が辞めたわね。データはまだ残ってるけど」
ここ洛山のレギュラーは、一二年生のみ。
三年生も上手いことは上手いのだが、それでも実力は後輩たちの方が上であり、三年生のレギュラーは誰一人としていない。