第14章 できないわ
そして、残り30秒を切り、得点は78-79で誠凛がかろうじてリードしている。
ここで、黄瀬の動きを見切ったのか、テツ君は黄瀬と向き合った。
黄瀬は、大ちゃん…征十郎…ゴール下ではあっくん…と次々に『キセキの世代』の彼らの模倣を繰り広げる。
まるで、そう誘導されるかのように。
「(でも…何か腑に落ちないのよね…)」
誘導された黄瀬は伊月さんにボールを弾かれるも、それを奪い返し、笠松さんへパス。
ボールはゴールに吸い込まれ、海常が逆転。
時間は残り4秒。
「…なるほど…さっきのラン&ガンはそう言うことだったのね」
誠凛は黄瀬を止めには来ていない。
スローインから火神が自陣まで走る。
だが、黄瀬の戻りも早く、レーンアップを決めようと跳んだ火神だったが、これは決まらないだろう…と直感した。
「火神君!!」
テツ君が叫ぶ。
その声に反応した火神はボードを使い、テツ君にパスした。
そして、テツ君の放ったシュートはブザー音と共にネットをくぐる。
『試合終了ー!!勝ったのは誠凛高校ー!!』
「テツ君……」
明日の決勝、洛山の相手は誠凛に決まった。
だけど、もう私には関係のないことなんだわ…。
まだ、目的は果たしていないのに…修ちゃんに怒られちゃうかしら…。
もう、ここに私の居場所はない。