第14章 できないわ
「藍川っち…俺、ずっと謝りたかったんス…。何であの時の俺はあんなバスケしかできなかったんだろう…って。叩かれたときはすげぇ腹立ったんスけど…考えてみれば、あんなの藍川っちが怒って当然ッスよね……」
私にテーピングをしてもらいながら黄瀬は、消えてしまいそうな小さな声で話し始めた。
「…でも、気づけたんでしょう?だったらいいじゃない。…それに、あの時は私もごめんなさい。皆がああなってしまったのは私のせいなのに…完全に八つ当たりだわ」
「そんなこと…!」
「慰めなんていいの。ほら、できたわよ」
いつも以上に念入りに施したテーピング。
それは通常のものとは異なる形状で、黄瀬も不思議そうに見る。
「これって…スパイラルテーピングッスか?藍川っち、できたんスね…」
「今までは使う必要がなかっただけよ。ただし、いくら補強したからと言っても、もって三分だと考えた方がいいわ。勿論、勝っても負けても明日は欠場よ」
私が言えば、黄瀬は私にあの頃と同じ、屈託のない笑みを見せる。
「やっぱり藍川っちには敵わないッス。流石ッスわ」
そんな黄瀬に、私も笑みを零した。
「…ねぇ、黄瀬。今…バスケは好きかしら?」
「好きっスよ!俺、海常で先輩たちとバスケするのが楽しくてしょうがないって感じなんス」
「そう…それだけいい顔できたら問題ないわね。…行ってらっしゃい」
黄瀬は私にもう一度笑顔を見せると、手を振ってコートへ戻って行った。