第14章 できないわ
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「ハァ…ハァ…」
洛山マネージャーという権限を使って、とりあえずコートの入り口までは来た。
だが、流石に中にまでは入れないだろう。
「すみません、海常の黄瀬君を呼んでもらってもよろしいでしょうか?」
近くにいたスタッフに声を掛けると、顔の割れている私だということで、無理なお願いも快く引き受けてくれた。
少しすると、黄瀬は私の元へやってくる。
「藍川っち…」
まともに顔を見て話すのは久しぶりの黄瀬。
その表情は暗い。
「早く座って、足を出しなさい……テーピングするわよ」
「…はいッス」
私に言われた黄瀬は大人しく、近くのイスに腰掛けた。
私もそれに伴い、黄瀬の前に屈みこんで彼の足首にテーピングを施してゆく。