第3章 似てるの
「電話?誰から?」
結局リンゴジュースに決めたらしい成美ちゃんは、それを飲みながら私に問いかけてくる。
「従兄よ」
「へぇ。仲ええんやな」
「あ、藍川さん!」
ポケットに携帯とそのまま手を突っ込み、成美ちゃんと飲み物を飲みながら歩き出した時、正面から声を掛けられる。
声の主の方に視線を送るが、顔を見ても誰だかわからない。
「…ごめんなさい、誰かしら?」
「D組の渡辺です。あの…話したいことがあるんで、ちょっといいですか?」
渡辺、と名乗る男の子は顔を真っ赤にさせて、そう言う。
私はその彼が俯いているのをいいことに、一瞬だけ少し面倒くさげな顔をして小さく息をつく。
「…ひゅーぅ。これで何回目?相変わらずモテますなぁ」
隣の成美ちゃんは、私を肘で突きながら小声で言う。
そんな彼女を横目で見て、私はいつもの営業スマイルを張り付けた。
「いいわよ?成美ちゃん、先に戻っててくれるかしら?」
「オッケー」
ニヤニヤとした笑みを浮かべながら成美ちゃんは、一人教室へ戻って行く。
「…で?話って何かしら」
教室へ戻って行く彼女を見送って、再び彼に視線を戻す。
「えっと…ここではなんだから…。屋上まで来てもらってもいいですか?」
「わかったわ、行きましょう?」
普段は無表情で話しているが、こんな時は反射的に笑みを作ってしまう。
やはり笑うのはこんなに疲れるものか、とここ最近は特に思うようになった。