第14章 できないわ
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86-70で終えた準決勝。
試合終了後は、控室へ戻り、ミーティング。
反省の多い試合だったため、今回のミーティングは長引いた。
「華澄」
長いミーティングを終え、既に第四クオーターも始まっているのではないか、という誠凛対海常戦を観戦しにギャラリーへ向かっていた途中。
征十郎は、最後尾にいた私に声を掛ける。
「…何かしら?」
「試合終了後、何故泣いていた」
「……」
私は征十郎から目を逸らし、斜め下の方へ視線を向けて黙り込む。
「勝ったのは僕だ。喜ばしいことじゃないのかい?何故涙を流す必要がある」
「…それは…」
「ハッキリ言っておこう。華澄は僕のマネージャーだ、他に目を向けるなど一切許さない」
「……」
WCに来てからの征十郎は、私に対する執着心がこれまで以上に強い。
おそらく。
『キセキの世代』の彼らの誰かに、私という名の”大切な道具”を取られる可能性を危惧してのことなんだと思う。