第14章 できないわ
なんと、征十郎が狙って自陣のゴールのボールを放ったのだ。
「僕がいつ気を抜いていいと言った。試合はまだ終わっていない。一時大差をつけたことで緊張感が緩んだか、たかだか数ゴール連続で決められた程度で浮足立ったのがいい証拠だ。もっと僅差であれば、こんな無様な姿を晒すことはなかったはずだ。ならばいっそ、点差など失くしてしまった方がまだマシだ。少し頭を冷やせ」
征十郎の冷たい声がこちらにまで届き、彼の言葉に他の四人も俯く。
「…だが、もし負けたら好きなだけ僕を非難しろ。敗因は僕の今のゴールだ。全責任を負って、速やかに退部する…そして罪を償う証として、両の眼をくり抜いてお前たちに差し出そう」
「!?」
傍から見れば、冗談に聞こえるかもしれない。
だが、彼の顔は本気だ。
「征十郎…!!」
思わず私は立ち上がり、叫んだ。
「藍川…座りなさい」
「ですが…!」
監督に促され、私は大人しく座ったが、コート内はそうもいかないようだった。
「何言ってんだよ、赤司!そこまですることねーだろ!」
「負けたらの話だ。勝てば問題ない。心配などしていない、何故なら僕は確信している。お前たちがいて負けるはずがない」
そう言った征十郎の顔はどこか優しかった。