第14章 できないわ
あの真ちゃんでさえ、『天帝の眼』の前では何もできない。
点差は20点になった。
この試合は…もう、私たちの勝ちだ…。
喜ばなければならないのに、私は俯いてしまう。
すると、征十郎に倒されたまま立ち上がらない真ちゃんの頭を、宮地さんが叩いた。
「……!」
そのまま立ち上がった真ちゃん、そして隣の高尾君の表情。
「(…まだ、諦めていない…)」
だけど、一体何を…。
OFも既に残り10秒を切り、秀徳は攻めあぐねている。
だが、それは残り3秒で起こった。
「!?」
ボールもないのに、真ちゃんは征十郎の前でシュートフォームに入る。
そして、高尾君がそこにパスを出した。
「なっ…」
3Pの…アリウープ…?!
一寸の狂いもなく真ちゃんの手に収まったボールは、そのまま放たれ、ネットをくぐった。
「これは…。君はここまで予想していたのかね?」
監督も驚きの表情を浮かべて、私に問いかける。
「…いえ。これは流石に、予想以上です」
私は思わず緩む口元を隠しながら答えた。
「(…真ちゃんも、変わったのね…?)」
元来、真ちゃんは確実に入ると確信したシュートしか打たない。