第13章 歯痒い…
だが、その時。
黄瀬はハーフコートのずっと向こうで、ボールを構え、深く沈みこんだ。
「(…これは…!)」
そこから放たれたボールは、大きくループし、ゴールへと吸い込まれる。
真ちゃんの『超長距離シュート』、そのものだ。
「あの馬鹿…っ」
いつか、黄瀬なら『キセキの世代』の模倣もできるようになる…とは思っていた。
実際今、モニターの中で黄瀬がやっているのは彼らのプレイそのもの。
大ちゃんと真ちゃんのシュート、あっくんのブロック。
「(だけど…今、これ以上やれば……!!)」
足首どころか、体全体への負担が、今の黄瀬には大きすぎる。
そして、私が一番危惧していた事態が起こる。
祥ちゃんはやはり黄瀬の足首に気づいており、審判に見えない角度で思いっきり踏み込んだ。
それでも黄瀬は耐え抜き、祥ちゃんのシュートを止め、そのまま自らシュートを決めた。
試合は終了、海常の勝利だった。
「これでベスト4が出揃ったな」
「ええ…」
本日最後の試合も終わり、私は征十郎と共に会場を出る。
「(今のままじゃ、黄瀬は明日は確実に持たないわ…)」
私は征十郎の一歩後ろを歩きながら、ポケットから携帯を取り出す。
もう一年近く連絡を取っていない彼のアドレスを引っ張り出し、メールを打った。