第13章 歯痒い…
その間にも、陽泉は点を重ねていく。
だが、それと同時に火神もどんどん調子を上げてゆき、ついにその時が来た。
「ゾーン…」
私は小さく呟いた。
ゾーンに入った彼は跳躍力もだが、その滞空時間も伸び、更にはあっくんのダンクすら止める。
「最早この勝負は決まったな」
征十郎の言う通りだ。
もう火神を止められる者は、陽泉にはいない。
ゾーンに入った者を止められるのは、ゾーンに入った者のみ。
その可能性があるのはあっくんと氷室さんだが、それはまず無理な話である。
ゾーンに必要な感情があっくんには欠落しているし、氷室さんは…こう言ってはアレだが、その資質がない。
試合は火神がエアウォークからダンクを決め、陽泉がタイムアウトを取っていた。
「まだ見るのか?」
「この後、海常対福田総合戦もあるでしょう?征十郎は先に帰ってもいいわよ」
「いや、華澄が残るのならば僕も残ろう」
「…そう」
征十郎はいつもと変わらない表情だ。