第13章 歯痒い…
「そう言うことだったのね」
「わかったのか」
「ええ。テツ君のシュートが消えた秘密は、打点の低さよ」
「…なるほど。つまり、打点の低さからDFの視界を下に向けることで、視界を急上昇するシュートで見えないように感じる、というわけか」
流石は征十郎、理解が早い。
私は口角を上げてコクリ、と頷いた。
「にしても…ドライブに続いてシュートまで覚えてしまったのね…。いつまで持つかしら」
「さあ?どうだろうね」
中学時代、征十郎はテツ君にパス以外の技術は一切教えなかった。
理由は、テツ君を目立たせないため。
今の様子からすると、テツ君は征十郎の思惑には気づいていなかったのだ、と実感させられる。
「第四クオーター。木吉なしで敦に勝つのは厳しいだろう」
「いいえ、木吉さんは戻ってくるわ」
「何を根拠にそう思う」
「ただの女の勘よ」
「……」
征十郎は何か言いたげな目で私を見たが、気づいていないフリで私はモニターを見た。
「見ない顔だね」
「12番のことを言っているの?」
「ああ」
第四クオーターが開始され、火神と氷室さんの一対一。
「名前は氷室辰也。ついこの間までアメリカにいたのよ、陽泉に入ったのは二学期から」
「アメリカ?」
「修ちゃんとも知り合いだったみたいよ」
「…へぇ」
修ちゃんの名前を出した途端、征十郎の涼しい顔がわずかに歪む。
私はそれを横目に見て、これ以上彼らの話題は止そう、とする。