第13章 歯痒い…
「華澄。まだこんなところにいたのか」
電話を切ったと同時に、帰ったはずの征十郎がやってきた。
「あなたこそ、帰ったんじゃなかったの?」
「いや、先程まで玲央たちと明日の試合について話していたんだ」
「あら、そう」
さほど興味もなく、私は再び視線をモニターに戻す。
すると、どこから聞こえる声。
「…あそこにいるのって、洛山の赤司じゃないか?」
「じゃあ、横にい(る)のはマネージャーの藍川ってことッスか!?」
「ホントにアメリカじゃなく洛山に居たんだな……ってオイ!森山!どこ行くつもりだ!」
「決まってるだろう。ここで出会ったのも…」
「いーから行くな!!」
話の内容は確実に私とその隣の征十郎のことだ。
その声のする方を目だけでチラリと見ると、その声の主は海常の選手。
ということは、必然的に私の嫌いなあいつもいるわけで…。
「それより黄瀬。お前、赤司や藍川と同中だろ?話しかけなくていーのか?」
やっぱり。
視界にこそ入れはしないが、チラチラと見える憎たらしい駄犬の姿。
「赤司っちは兎も角、藍川っちがいるんで遠慮するッス」
「は…?何で…」
「俺、あの女だけはマジでいけ好かねーんスよ」
全部聞こえてるわよ、この阿呆。
「酷い言われ様だな」
「わざと聞こえるように言ってるんじゃないの?」
隣の征十郎はフッと笑う。