第13章 歯痒い…
あっくんも、今は平気でも、このままでは確実に最後まで持たない。
「……」
私はポケットから携帯を取り出し、さっちゃんに電話を掛けた。
『もしもし、カスミン?』
「さっちゃん、試合見てるんでしょう?そっちはどう?…って、私も裏モニターで見てるんだけどね」
進んでゆく試合を眺めながら私は続けた。
「…ねぇ、さっちゃん。一つお願いしてもいいかしら」
『?』
中学時代、誰よりも私の側で私のテーピング技術を見てきた彼女なら、きっと口頭でも伝わるはず。
そう。
私がさっちゃんにお願いしたのは、木吉さんのテーピング法を誠凛の監督さんに伝えること。
「(あっくん…ごめんなさい。私は、今のあなたに手は貸せない)」
私は…かつての仲間、自分を想ってくれるあっくんではなく。
木吉さんを、テツ君の誠凛を選んだ。
これが、私の答え。