第12章 本当にそうかしら
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会場内は暖房も入っていたし、コートからの熱気でそこまでなかったのだが、やはり年末十二月。
外は尋常じゃないほど寒い。
一人会場を出た私は、寒さに耐えるように、ポケットの中の手をグッと握りしめた。
「藍川さん!」
後ろから私の名前を呼ぶ懐かしい声。
振り返ればテツ君。
「テツ君、久しぶりね」
「はい、お久しぶりです。あの…木吉先輩のテーピングをしたのは…」
「私は教えただけよ」
そう言いながら、私はテツ君に微笑みかけた。
「いいんですか?とても赤司君が許すとは思えませんが…」
「うーん…大丈夫なんじゃないかしら?」
「カスミン!!」
心配そうな表情を浮かべて問いかけるテツ君に、何でもないような顔をして見せる。
実際のところは少し怒らせてはしまったけどね。