第12章 本当にそうかしら
これから、って…。
流石に大ちゃんがゾーンに入った今、打開策なんて…誠凛側の誰かが同等にゾーンに入るしか…。
「火神…?」
私が問いかけるが、征十郎は言葉にして返さない。
だが、その表情から肯定の意がくみ取れた。
『キセキの世代』の彼らと遜色ない彼なら入れるかもしれない…けど、そう簡単には…。
「青峰と火神の一対一!?」
タイムアウトが終わり、試合は再開。
彼にしか託せない、とはいっても、あまりにも差がありすぎる。
更に、ここでミスディレクションオーバーフローの効果も切れ始め、今度こそ万策は尽きた。
どうにかくらいついて行くも、もう…。
「……!」
一対一で大ちゃんと向き合っていた火神は、DFを抜かれた…ように見えた。
「(嘘、あり得ない)」
ゾーンに入った大ちゃんに追いつくなんて、そんなことできるのは…。
「嘘でしょう?火神が、ゾーンに入った?」
ゾーンに入ったもの同士の対決。
息をのむ暇もないないほどの均衡状態。
もう一分ほど、両者点が入らない。
「二人ともゾーンによる集中力と反射速度が最高速度を超えている…」
「どちらも他のメンバーは立ち入れない…。勝負は、この二人に託されたも同然だわ」
だけど…。
「(大ちゃん、あんなに目を輝かせて…楽しそう)」
こんな彼の表情を見たのはいつ以来だろう。
もう随分と昔のこと過ぎて、思い出せない。
でも、良かった…少しでも、あの頃の大ちゃんに戻ってくれて。
私は目を細めて、大ちゃんの様子を微笑ましく眺めた。