第12章 本当にそうかしら
そして、更に桐皇9番のファールで誠凛は3本のフリースロー。
「日向さんなら間違いなく決めるわね…点差は3点…って、あら?」
日向さんのフリースローで、セットに着くはずの大ちゃんが、何故か外れた。
そして、息を整えるかのように、深呼吸を繰り返す。
「3本とも決めたー!」
「うわー、まじか!?」
「3点差!3点差だー!!」
違う、何かおかしい。
大ちゃんの様子が…。
「まさか!」
私が確信したと同時に、大ちゃんは見たこともないスピードでDFを抜き去り、そのままゴールを決める。
間違いない。
これは……ゾーンだ。
「僕たちも初めて見るな。これが大輝の本当の姿か」
「…それだけ本気だということなの?」
「そう言うことだろう。ただ、面白いのは、大輝が自らの意志で入ったということだ」
試合の流れの中で集中力が増し、そこから偶然ゾーンに入った、というならわかる。
そもそも、ゾーンなんて入ろうと思ってそう簡単に入れるものではない。
「うお、また決まったー!青峰が止まらねー!!」
誠凛はいまだ誰一人として諦めていない様子ではあるが、もはやゾーンに入った大ちゃんを止める術など、存在しない。
『誠凛高校、T・Oです』
緊急事態にタイムアウトを取るが、ここから何か打開策なんてあるの…?
「勝負はこれからだ」
「え…?」
征十郎は涼しい顔のまま言う。